白鳥の館「藤崎八幡宮」ーつがるみち74

ここは「羽州街道」と呼ばれる国道7号線と黒石~五所川原方面を結ぶ110号線が交差する要所ですが、その道路沿いに鎮座しているのが藤崎八幡宮です。

由緒書きによると、この藤崎八幡宮は【前九年の役(1056年)に敗れた安倍貞任の次子高星丸が、寛治6年(1092年)藤崎築城と同時に、領内の鎮守として、領民の安堵と安東氏の武運を祈願して創立したのが、この旧村社八幡宮である。祭神は品陀別命(ほんだわけのみこと)・・津軽藩政時代においても、代々の藩主は、この神社を崇敬し、藤崎組の総鎮守に定め、安永年間(1772~1781)には、組大神楽を奉納し、藩の繁栄を祈願している】とされています。
今の時期、どこの寺社もそうですが、境内は雪にすっぽりとおおわれていて、体に雪をのせた神馬達も、 とても寒そうです。こちらは狛犬達。 雪のために表情ははっきりと見えませんでしたが、首を大きくひねって顔を正面に向けている姿は、とても愛嬌があります。境内には、いくつかお堂が建っていますが、小ぶりなお堂があったので、中をのぞいてみたら、親子の馬達が住んでいました。

拝殿 にはまだ初詣のなごりが感じられ、その中を のぞいてみると、八幡様のお使いとされる鳩の絵なども掲げられていました。
この拝殿・本殿の後ろ側は小高い丘になっていますが、これが「藤崎城土塁の跡」です。
丘の上には、猿田彦を祀る祠とともに、「安東氏顛末記」 という大きな石碑が立っています。石碑の表面には、文字がびっしりと刻まれていましたが、読めませんでした。文字通り、この地における安東氏の「あしあと」を記したもののようです。境内にはまた、安東氏の末裔の墓所 もありました。
この「顛末記」の隣りに小さな石碑が2つ並んで立っていましたが、雪をどけて見ると、「二十三夜塔」 という文字が浮かび上がってきました。もう一つは、暦応3年(1340年)の板碑で、 この神社の向かい側にある「稱名寺(しょうみょうじ)」の境内から出土したといわれています。
この土塁は国道の方にも延びており、そこには「藤崎城土塁の跡・安東氏発祥の地」という木柱があって、道路側から見ると、その様子がよく分かります。⇒藤崎城土塁

さて、前九年の役で敗れた安倍貞任の子・高星丸は津軽に逃れ、安倍十郎貞義と名乗ったとされますが、藤崎城は、高星丸の子・尭恒(たかつね)が寛治年間(1089~93年)に築城したといわれています。
以後、安東氏を称するようになった子孫達は十三湊に進出し、繁栄を極める分けですが、安東氏が蝦夷地に撤退した後、城は南部氏が支配するようになります。やがて南部氏を駆逐した津軽為信は、ここに義弟の六郎や甥の五郎らを配置して重要な拠点としましたが、1585年(天正13年)頃、この六郎と五郎が川で事故死する事件があったため、その後、藤崎城は廃止されたとも伝えられています。
ー かつては、東西360m、南北800mという広大な平城であった藤崎城は、今、八幡宮の境内にわずかに残る土塁のみです。
ー (谷川健一さんの『白鳥伝説』などによると)藤崎・安東氏の祖である奥州安倍氏は「白鳥信仰」を持つ一族であり、「白鳥八郎」を称し、前九年の役で源頼義軍に抵抗したとされることや、高星丸の子孫の中にも「白鳥太郎」を称する者がいたこと、さらには藤崎城が「白鳥館」と呼ばれていたことなど、藤崎町は白鳥の伝説を残している町といえそうです。そんな藤崎町に例年、多くの白鳥が 飛来することを思うと興趣がつきないものがあります。
☆つがるみち☆
- 関連記事
-
- 水沼保食神社ーつがるみち378 (2016/04/12)
- 富柳正八幡宮ーつがるみち375 (2016/04/05)
- 正法庵と稲荷神社ーつがるみち346 (2016/01/09)
- 境内でひと休み「矢沢正八幡宮ほか」ーつがるみち261 (2015/04/10)
- 境内でひと休み「水木熊野宮ほか」-つがるみち228 (2014/12/14)
- 村の繁栄を願って「八坂神社」-つがるみち226 (2014/12/02)
- 境内でひと休み「徳下八幡宮ほか」-つがるみち224 (2014/11/28)
- 村の蒼前さま「崇染宮」-つがるみち223 (2014/11/26)
- 集落の鎮守神「荒磯崎神社」-つがるみち222 (2014/11/24)
- 年縄奉納行事「常盤八幡宮」-つがるみち221 (2014/11/23)
- 白鳥の館「藤崎八幡宮」ーつがるみち74 (2014/01/11)
- 白鳥の伝説あれこれーつがるみち73 (2014/01/09)
- まちのはじまり「鹿島神社」ーつがるみち72 (2014/01/07)
- 唐糸御前の伝説ーつがるみち39 (2013/11/01)
- 我が身をもって2「堰神社」ーつがるみち38 (2013/10/30)

