落城悲話「一本杉とじょんから節」ーつがるみち99

黒石市・浅瀬石城もそのひとつで、その落城に関する悲話は、「一本杉」及び「じょんから節発祥の地」という史跡として今も残されています。 ⇒浅瀬石城址・一本杉・じょんから節の碑

浅瀬石城は、黒石市・高賀野に築かれた平城で、現在は城址碑 と土塁や掘の跡がわずかに残るのみですが、その絵図 を見ると往時の広大さが分かります。
定かではありませんが、この城は仁治元年(1240年)、南部氏の一族・千徳(せんとく)伊予守行重によって築城されたといわれています。戦国時代には、石川城(弘前市)や大光寺城(平川市)とともに、南部氏の津軽支配の拠点であり、交通の要衝でしたが、永禄4年(1561年)、10代城主・千徳政氏は、大浦(津軽)為信と「統一の暁には津軽を二分する」という盟約を交わし、南部氏に叛旗を翻します。
その後、千徳氏は為信と組んで、大光寺城や、同族であり南部氏に忠誠を誓っていた田舎館・千徳氏を攻略し、これを滅ぼす分けですが、この千徳氏の裏切りに激怒した本家・南部信直は、大兵を派遣し、浅瀬石城を攻撃します。しかし、千徳氏の頑強な抵抗に合い、城を落とす事ができなかった分けですが、盟友・為信はこのとき千徳氏のもとへ援兵を送らず、このことが同盟亀裂の原因にもなったとされています。
やがて、津軽平定がほぼ成った後に、為信と千徳氏は対立するようになり、遂に慶長2年(1597年)、為信軍の攻撃を受け、千徳氏は滅亡、浅瀬石城は落城した分けです。
◇『津軽じょんから節』
♪二 ハアー今は昔の七百年前 南部行重城主となりて 伝えつたえて十代あまり
♪三 ハアー頃は慶長二年の春に 大浦為信大軍率い 城主政保討死いたす

東北自動車道・黒石ICの辺りの道端に「一本杉」と呼ばれる杉の木がポツンと立っています。高さ15mといわれるこの老木は、辻堂とともに、もとは浅瀬石城主・千徳氏の菩提寺にあったものといわれていて、現在は「辻堂跡」として史跡になっています。
この老木には、落城し、滅亡した千徳家の怨念がこもっていると信じられ、古くから大切に崇められてきた分けですが、東北縦貫道路の建設にあたり、この木が路線にあたっていたために、一時は切り倒しの話も出ました。しかし、「切り倒しては災いがおこる」という村民の意見を受け、もとの場所から50mほど離れた現在地に移植されたとのことです。 ⇒史跡一本杉(画像複数)
さて、この辻堂の住職は常縁(じょうえん)という和尚でしたが、常縁は、【為信軍と戦う主家の必勝を祈願し、神仏の加護を信じて熱祷を捧げていたが、大浦勢は喚声を挙げて辻堂にも乱入し、手当り次第に仏像をこわし、墓をあばく乱暴を働いたので、和尚は先祖代々の位牌を背負い、薙刀を構えて仁王立ちとなり「汝等、大浦の犬ざむらいめ!仏像をこわし、仏を足げにするとは仏道を恐れぬ人非人ども、人は死しても霊魂は不減なり、我れ死すとも、この罪は汝等の子々孫々に至るまで祟りあらん」と大声で叫び、大勢の大浦勢を相手に奮戦したが、多勢に無勢で、逐いに裏道から白岩まで逃れたが、進退極まり浅瀬石川 の濁流に飛込んで、その一生を終った。】とされています。
◇『津軽じょんから節』
♪四 ハアー時に辻堂常縁和尚 先祖代々位牌を背負い 高い崖から濁流めがけ

常縁和尚が身を投じた場所は浅瀬石川に架かる上川原(じょうがわら)橋 の付近で、現在はそこに「津軽じょんから節発祥の地」という碑が建てられています。
【和尚が身投げしてから数年後の夏、村の子供等が川原で砂遊びをしていると、砂の中から変り果てた常縁和尚の屍体があらわれた。子供等の騒ぎに村人が駆けつけ、相談の結果、その場所に墓を作り、手厚く葬って、常縁の墓と名づけたので、この辺一帯を「常縁川原(じょうえんかわら)」と称した。】といわれていて、「常縁川原」がやがて「上川原」となっていったとのことです。
以来、お盆になると村人達はこの川原に集い、盆踊りに即興の唄を添えて常縁や千徳氏の霊を慰めた。 ー それが、やがて津軽を代表する民謡『津軽じょんから節』 となったという分けです。
◇『津軽じょんから節』
♪五 ハアーやがて春過ぎ真夏となりて村の子供等水浴びすれば 砂の中から哀れな姿
♪六 ハアー村の人達手厚く葬り 盆の供養をすました後は 昔偲んでじょんから節よ
※【】は『津軽じょんから節』説明板を参考にしました。また、じょんから節の歌詞には様々なものがあります。
☆つがるみち☆
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