津軽の北斗七星「猿賀神社」ーつがるみち121

「地上の北斗七星」になぞらえられた七神社は、いずれも坂上田村麻呂の東征伝説に基づいている分けですが、この猿賀神社の縁起には、とり分け、田村麻呂と蝦夷の首長の戦いの話が大きく取り上げられています。
この神社の由緒等については、以前の拙記事をご覧いただければ幸いです。 ⇒拙記事「猿賀神社」

伝説によると、この地で坂上田村麻呂と戦ったのは、岩木山に住む「大丈丸」という蝦夷の長で、田村麻呂は浪岡に陣を構え(七神社のひとつ浪岡八幡宮)、岩木山、阿闍羅山で戦いを繰り広げていましたが、八幡崎(猿賀神社の一帯)の戦いでは、「田村麻呂は大丈丸と一騎打ちとなったが、大丈丸の力のほうが勝っており、もはやこれまでかと思われた。その時、何処からともなく、こもをまとった大男が現れ、大丈丸に襲いかかった。大丈丸が一瞬ひるんだ隙に田村麻呂の剣が大丈丸の胸を貫いた。田村麻呂はこの助太刀の男に尋ねたところ、猿賀の郷兵衛と名のり立ち去った。」といわれています。
この田村麻呂を助けた巨漢は、実は「深沙大将(じんじゃだいしょう)※深沙神、深沙大王とも」の化身で、田村麻呂はその勝利に感謝し、「深砂(沙)大権現」として祀ったのが猿賀神社の起こりといわれている分けです。
深沙大将は、【玄奘三蔵がインドに仏典を求める旅で、途中の砂漠で難儀をした時、出現して励ましたと伝えられる護法神(沙悟浄)。形像は腰衣だけ着る力士形の裸形像で、腹部に小児の顔を出現させ、首に髑髏(どくろ)の瓔珞(ようらく)をかける二臂(にひ)の立像である。※kotobankより】とされていますが、猿賀の伝説は、玄奘三蔵の難儀と田村麻呂の苦戦を置き換えて伝えたもののようです。
また、深沙大将は、その手に青蛇を掴んでいるとされていますが、境内の胸肩神社や水天宮の大蛇、拝殿の青龍、本殿の白龍などは、深砂大権現の象徴な分けです。
⇒猿賀神社の龍(大蛇)※画像複数

正式には「富野猿賀神社大権現」と呼ばれるこの社は、およそ200年前、文政8年(1815年)に平川市・猿賀神社より分霊され、深砂大権現を祀ったのが、その始まりと伝えられています。平川の猿賀神社は、その御祭神は現在、上毛野君田道命になっていますが、ここでは祭神の差し替えは行われなかったようです。

中泊町は、小泊村と中里町が合併してできた町ですが、旧小泊村は漁業が盛んなのに対して、この「下の猿賀さま」のある旧中里町は農業依存型の町です。
この地域もまた、江戸時代に新田開発が盛んに行われた分けですが、一帯は葦の茂る沼地が多く、その開拓は容易ではなかったようです。 ー 【湿地帯で「腰切田」とか「乳切田」といわれ、多くは深いぬかるみ田んぼ。加えてたびたび冷害に見舞われた。※中泊町HPより】
そんな先人の苦労や努力を物語るように、神社の近くには「葦の魂」という石碑が建っていました。「不撓不屈の心」ということでしょうか。。

「富野猿賀さま」 という看板にしたがって歩いて行くと、間もなく大きな鳥居 が見えてきます。鳥居の先は「般若寺」というお寺。神社はこの般若寺の境内にあります。完全な神仏混合の世界です。
般若寺の由来は、【「元和中(1615―1624)考弁と云う僧の開基」とされていますが、おそらく新田の開発が進行するなかで成立し、地域の祈願所になったものと考えられます。元文元年(1736年)に成立した富野村の検地帳には「自性院」という寺が記されています。この自性院が一時期無住になったのち、般若寺として再興したとする説もあります。 ※中泊町博物館HPより抜粋】といわれています。
本堂からは、神社への参道が延びており、その先に猿賀神社がありました。
⇒般若寺と境内 ※画像複数
ー 次回へ続きます。
☆つがるみち☆
- 関連記事
-
- 白岩森林公園の十和田様ーつがるみち247 (2015/02/23)
- 家臣の手で「李平保食神社」ーつがるみち243 (2015/02/11)
- 田村麻呂伝説「阿蘇神社」-つがるみち227 (2014/12/04)
- けやきの森「七柱神社」-つがるみち220 (2014/11/09)
- かつての陣所跡「高木愛宕神社」-つがるみち205 (2014/09/28)
- 田村麻呂を救った「渾神の清水」-つがるみち162 (2014/06/28)
- 火性三昧「赤倉山金剛寺」ーつがるみち154 (2014/06/11)
- 津軽の北斗七星「猿賀神社」ーつがるみち121 (2014/04/05)
- 殿様と八幡宮その2「新屋八幡宮」ーつがるみち101 (2014/02/24)
- 殿様と八幡宮その1「尾崎八幡宮」ーつがるみち100 (2014/02/22)
- ぬけがけした姉「熊野神社」ーつがるみち75 (2014/01/13)
- 水の伝説「猿賀神社」ーつがるみち35 (2013/10/26)
- 津軽の霊地「猿賀神社」ーつがるみち34 (2013/10/25)
- 猿賀石と「猿賀神社」ーつがるみち33 (2013/10/23)
- 猿賀石と「山神社」ーつがるみち32 (2013/10/21)

