鬼沢めぐり1「鬼神腰掛柏」ーつがるみち143

この赤倉の鬼達は、坂上田村麻呂軍との闘争の話とか、里の村人との交流の話とか、様々な伝説をもたらし、その足跡は、鬼沢の鬼神社、十腰内の厳鬼山神社、大石神社や鰺ヶ沢町の湯船町などに数多く残っています。

中でも鬼沢地区は、その名前が示すように、鬼伝説が色濃く残っているところで、地域の入口には、「歴史と伝説の里:鬼沢」の看板。伝説とは即ち鬼伝説のことですが、その看板の裏側には、「地域の鬼神伝説の名所」 が描かれていました。
その看板から、村の奥に向かって進んで行くと、「鬼の足跡」というひとつの石碑が立っています。真新しい注連縄が張られたこの碑は、りんご畑に囲まれた道路際にポツンと立っていますが、石碑の真ん中に大きな円形の凹みがあり、これが鬼の足跡だと伝えられている分けです。

何回かお伝えしてきましたが、この岩木山麓の鬼は、村人の農作や潅漑を手伝ってくれる「優しい鬼」として親しまれ、敬われている分けですが、鬼沢には次のような話が伝えられています。
【昔、鬼沢が長根派(ながねはだち)という地名であった頃、岩木山周辺は阿曽部(あそべ)の森と呼ばれていた。あるとき、村の弥十郎という農夫が、山へ薪を取りに行ったとき、岩木山中の赤倉沢で大人(鬼)と出会い、仲良くなった。親しくなった二人は、よく力比べをし、相撲をとっては遊んでいた。】
この二人が相撲をとって遊んでいた場所が「鬼の土俵」といわれている所です(同名の場所は岩木山の赤倉登山ルート上にもありますが)。
訪ねてみると、そこには、赤い鳥居が立っており、「鬼乃土俵」という石標もありました。小さな祠がありましたが、中を覗いて見ると、そこには「鬼乃土俵大神」が祭られていました。伝承によれば、弥十郎と鬼が相撲をとっていた「土俵」の場所には、雑草があまり茂らないのだということ・・いわれてみれば、辺りに比べて少し草が少ない感じもしましたが。。
◇鬼の足跡と鬼の土俵 ※画像はクリックで拡大します。







鬼沢の伝説は続きます。
【鬼は、たびたび弥十郎の仕事を手伝っていたが、あるとき、弥十郎から「水田を拓いたが、すぐ水がかれてしまうので困っている」という話を聞いた。そこで鬼はさっそく、赤倉沢上流のカレイ沢から堰を作って水を引いてくれた。村人はこれを喜び、この堰を「鬼神堰」とか「さかさ堰」とよび、鬼に感謝した。】
そんな鬼が弥十郎とともに村へと降りてくるとき、途中で、その枝に腰掛けてひと休みしたという話が伝わる一本の柏の木があります。名づけて「鬼神腰掛柏」。
そこは、りんご畑の中にひとつの鳥居が立っている場所ですが、大山祗神社 と呼ばれ、この柏の木はその御神体とされているようです。
柏の木は、県の天然記念物にも指定されていますが、推定樹齢が700年、樹高11メートル、幹周3.6メートルといわれています。
根元の祠には、鬼が履いた?と思われる鉄の草鞋なども置かれていて、地上2m位から、長い枝が何本も横に広がって延びていました。「鬼が腰掛けた」という話にふさわしい巨木です。鬼は、ただひと休みするだけでなく、この木に腰掛けながら、弥十郎に様々な知恵を授けたりしたのだとか。。
◇鬼神腰掛柏 ※画像はクリックで拡大します。





そして伝説は、【鬼は、自分が堰を造ったりしている姿を絶対見てはいけない、と村人に約束させていたにもかかわらず、弥十郎の妻はそれを見てしまった。そこで鬼は堰をつくる時に使った、鍬とミノ笠を置いて去り二度と姿を見せなくなった。弥十郎はそれを持ち帰り祀ったのが鬼神社の始まりである。そして、地名を「鬼沢」としたのである。】と続きます。
この伝説は、日本に古くから伝わる昔話の要素を含んでいるとともに、赤倉の沢は神が宿るにふさわしい荘厳な場所と考えられていたこと、岩木山麓では、かつて製鉄が盛んに行われ、鉄を扱う先住民が村人とともに農地の開墾に励んでいたことなどを思わせます。山に住む彼らは蝦夷と呼ばれ、田村麻呂軍と衝突したのかも知れません。
ー 次回へ続きます。
※【】は、鬼沢フジタ林檎園HP「古代より言い伝わる鬼神伝説」他を参考にさせていただきました。
☆つがるみち☆
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